やちよ絵手紙の森美術館

2015年4月の絵手紙エッセー『遠いあの日』

空ではひばりがさえずり
白い雲は真綿のように浮かび
新しい木々の芽はお日様に向け
ばんざーい、と両手をあげている
何もかもまるで生き返った様に
輝いて、私の想い出箱の鍵を開けた
そう、あの日も桜の花が満開で
通学路の土手には沢山のツクシが
にょきにょきと背比べをしていた
校門の前の古い桜の木も満開
木造校舎の職員室の窓際も
桜の花で覆われるほど満開だった
『新任の若い男の先生が来るんだって!』
女学校でのクラスの話題はいつも
華やいだ噂話に事欠かなかった
夢は膨らみ、希望は空に向かっていた
青春と言う貴重で最も美しい時代を
存分に生きようと思っていた、あの頃
始まりの一歩を踏み出す時にはいつも
満開の桜の花が背中を押してくれた
遠いあの日も、そして今も不安な気持ちに
勇気をくれたのは桜の花だった

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